騎士のように凛と立つ
されど跨ぐものは白馬ではなく処刑台の上

物心ついた時から剣を手に取り
罪深き彼の首を地獄へ堕とす
その瞳に慈悲の心はない
冷たい悪魔の微笑みが凍りつかせる

黒き返り血を浴びて感情が奪われた
僕はもう戻れない 純潔の過去には
父の姿を追い続けてここにいる
そのためならば涙など無意味なのだと

天下に構えて振り翳す
己の手で裁く覚悟を手に入れたのだから


死刑執行人の家系に生まれおちた
その瞬間から運命は決まっていた
善も悪も何も知らないまま
処刑台で父の隣、見続けた断罪

心のどこかに植え付けられた芽が生えるのを
まだ無垢な少年は感じたことだろう

父は誕生日に託した 死刑執行人の証を
僕は憧れていた、罪を裁く父に
高貴と誇りを胸に抱き
厳かな美少年、【舞台】に立った


ある日父は大罪を犯した
民は彼を赦しはしない
裁くのは神と人は云うけれど
本当に裁くのは……

ごめんね父さん…赦したかったのに
愚かな民は哀れな僕を称えるのさ
「処刑台の王子」だと…

父の罪さえも洗い流せるように
ただそのために剣は錆び血に穢れた
逃げられぬ王子は彼らを嗤った


【処刑台の王子】

処刑人の残酷で皮肉な物語。
父の「大罪」が無実であることを願いたかった。